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院長日誌

2016.08.04 学会・セミナー 第12回ESLOで Best Speakerを頂きました!

裏側からの矯正歯科では世界で最も歴史と権威のある European Society of Lingual Orthodonticsの 第12回学術大会 が 6月30日から7月3日、アテネの メガロン・コンサートホールで開催され、学会から全てのセッションにおけるベスト・スピーカー賞を頂きました。

1年ほど前でしょうか、大会長のDr. Takis Kanarelisから学会への招待と講演の依頼、症例審査委員会の委員長である Dr. Germain Beckerからは、アクティブ・メンバーの症例診査を依頼されました。

ESLOは自分が最も大好きな学会なので、講演依頼は快諾しましたが、症例の診査・採点を行う事は辞退しました。自分は Non-Europeanなので、他の会員からクレームが出るといけないと思ったからです。
しかしながら、学会は、Hiroは世界で初めて EBOを全部舌側矯正で合格した矯正専門医であり、会としては Only One Non-European Examinerとして Hiroが試験官をやってくれることを誇りに思うから、是非とも引き受けて欲しい、とのお言葉を頂きましたので、有り難く引き受けさせて頂きました。

ギリシャといえば、サントリー二島の青い海と白い建物、アテネといえば、アクロポリスです。
いつも仕事が忙しくて、リラックスすることが出来ないので、今回はサントリー二島にも行ってみたいなあ、アテネ市内もバッチリ観光するぞ! と、中央タクシーで松本を後にしました。

シャルル・ド・ゴールANAから Air Franceに乗り継ぎ、 6月30日の夜中零時半頃に学会場近くの ヒルトン・アテネに到着。
部屋からは、ライトアップされたアクロポリスが見えました。



疲れていましたが、プレゼンの準備が終わっていないので、寝ている場合ではありません。
パワーポイントに直しを入れ、講演時間をオーバーしないように発表練習し、また直しを入れ、、、気がつけばアクロポリスが朝日に照らされています。




朝食を食べながら今日は何処に行こうかな、と、ネットで観光を模索し、ついでに明日から始まる学術大会のプログラムをチェックすると、、、あっ! 今日は症例の採点をしなければならないじゃん!!

というわけで、観光はナシ、朝食を済ませてすぐに学会場に向かいます。



会場に着いて審査委員会のメンバーと採点方法の確認を行い、症例審査を開始します。



自分を含めて11名(イギリス、フランス、ルクセンブルク、ドイツ、ロシア)の先生達が所定の方法で  Titular member, Active memberの症例審査を行います。



夕方には全ての審査が終了し、審査委員全員でミーティングを行い、解散。
ホテルに帰って、再度、パワーポイントに直しをいれます。

夜は20:00から恒例の Welcome Cocktail Partyです。
お迎えのバスで会場に向かいます。
会場では、2時間ほどの Greek dancingのあとでカクテルパーティーが始まりました。



ビールを飲みながらいろんな先生達と会話が弾みます。


翌日、7月1日は朝から学会場に行き、他の先生方の講演を聞き、Dental Technicians’ Meetingにも顔を出し、アッという間に1日が終わります。

その夜は、President’s Dinner Partyが シーサイドの レストランで開催されました。
1993年から毎年ミシュランを獲得しているレストランです。
自分の席はFernandoがキープしてくれたのですが、自分のテーブルは確保されているとのことでそちらに移動、ESLOの歴代会長達とお話をしながら楽しくディナーを頂きました。



ホテルに戻り、またパワーポイントに直しを入れます。


翌日、7月2日は 10:40から自分の講演です。
講演内容は、Japan Orthodontic Board、すなわち日本矯正歯科学会の認定医、指導医、専門医の制度と試験内容について、American Board(ABO)European Board(EBO)と比較して紹介、合格症例をまじえてお話させて頂きました。

まず ABOについて。
ABO試験は、ケース・カテゴリーは指定されていませんが、難易度の指定があり、DIが20点以上の症例を3つ、10点以上の症例を3つ提出しなければならないということ、そして何よりも他の試験と違うところは、治療の終了した症例を持って行くのでは無くて、これから治療をする症例を持って行き、定められた期間内に試験に合格するレベルで治療を終了して提出しなければならないということです。
もちろん臨床試験を受けるには、事前に筆記試験、口頭試問にも合格しなければなりません。
自分も ABOを受けてみたいのですが、残念ながら ABOはアメリカ、カナダの歯科大学を卒業するなど、所定の要件を満たさなければ受験資格がありませんので、自分には受けることが出来ません。





EBO
は、指定されたカテゴリーの 8症例を持参、もちろん口頭試問もあります。
EBOが他の試験と違うところは、生涯で 2回しか受験できない、つまり、1発目で合格しなければ、あと 1回しか受験する事が出来ないという事です。
幸にも自分は 1発で合格しましたので、プレッシャーはありませんでしたが、1回落とすと、チャンスはもう 1回しか無いわけで、それが恐くて 2度目の受験を躊躇する先生が多いと聞いています。



講演では、「もしも2回以内に受からなければ、死ぬまで受ける事はできません。」と言ったら、狙いどおり、会場内バカウケでした、、ヨカッタ!

そして、日本矯正歯科学会の専門医試験について。
日本矯正歯科学会は、認定医制度を1990年に、指導医を1997年に、そして、専門医を2006年に発足しております。
現在、日矯学会の会員数は約6600名、この中には、小児歯科、一般歯科の会員が相当数います。
そして認定医が3029名、この中にも、小児歯科、一般歯科の会員が相当数います。
そして専門医は309名、会員全体の4.8%にしかすぎません。
私個人の意見としては、「日本矯正歯科学会専門医」はその名のとおり、「矯正歯科専門医」であるべきだと思いますが、実際には、小児歯科診療を日々行っていることが明らかな矯正歯科専門医で無い先生も含まれている事が確認されています。

日矯専門医試験は、10種類のカテゴリーが指定され、治療結果だけで無く、写真や模型の質、レポートの詳細さなども採点対象なります。



発足当初、私が受験した頃は、一度に10症例を持って行き、合格しなければなりませんでしたが、最近では、いくつかの症例を自分で選んで提出し、所定の年度内に10種類のカテゴリーを合格すれば良いという「積み上げ方式」となっており、ハードルが大幅に低くなりました。

日矯専門医の試験は、匿名で行われており、試験官が誰か、受験者が誰かということは完全に秘匿化され、受験者は症例展示室の入り口で受付番号とはまた異なった番号札を渡され、その番号のところに症例を展示します。
所定の時間内に展示を終え、部屋を退室、そのフロアから誰も居なくなった後、試験官がやって来て、採点を開始します。
ハードルが低くなったとはいえ、過去には某歯科大学の教授が2度も試験に落っこちていますので、日矯専門医試験がいかに公正かつ公平に行われているかということがおわかり頂けると思います。

興味深いのは、日矯専門医の数が、2009年には 323名居たのが、2016年では 309名に、24名減少しているということで、普通は会員数を増やしたいので、経年的に増加して行く傾向があると思いますが、日矯専門医に関しては、減っているということです。
これはそれだけ試験がきびしいということか、志願者のレベルが低下しているのか、あるいはお亡くなりになったか、更新試験に合格できなかったか、といったところでしょうか、、。



与えられた講演時間を超過すること無く、講演を終えました。

以前にひろ矯正歯科に見学に来た親友の Fernandも講演を行いました。



その日のプログラムが全て終わったあと、DUOL reunionに呼ばれていましたので出席しました。
パネルには、パリ大学での写真がたくさん貼ってあり、自分が診療している写真や、パリ大学の先生達と一緒に過ごしている写真がたくさんありました。



みんな一言づつコメント述べましたが、自分は Alainが健在であった頃の思い出が次々と思い出され、こみ上げてきて、何も話をする事が出来ませんでした。


Alainの真似をして、隣の人達を倒してやりました(^^;)


その夜は埠頭の素晴らしい会場で Gala Dinnerが行われました。



最初は端っこのテーブルに座っていたのですが、Hiroの席はこっちに用意してあるから移動してくれと呼ばれて、ステージ前の席に移動します。

Galaではいつも Active member, Titular member試験の合格者の発表と、学術大会の表彰が行われます。

以前にひろ矯正歯科に見学に来た Dr.Svetlana Koval, Dr. David Manzanera が Active member試験に合格されたのは、我が事のように嬉しかったです。



Michelと話をしながら食事をしていると、全てのセッションでのベスト・スピーカー賞に “Toshiaki Hiro”と呼ばれ、慌ててジャケットを羽織ってステージに登ります。
Best speakerや Best  panelistは、会場で聴講している先生方の投票によって決まります。
仲が良いから授与するなどのインチキは一切ありません。
ところが、私の受賞に嫉妬して腹を立てた日本人の先生が、あろうことか学会の重役に暴力を振るい、殴られた先生はメガネが吹っ飛ぶという、信じられない事件がありました。
私はみなさんに評価されたことがとても嬉しかったですが、同じ日本人として恥ずかしい、許しがたい事件が起こってしまいました。





翌日4日は学会最終日です。昼過ぎに全てのセッションが終了し、以前 ひろ矯正歯科に見学に来たDr. Chintan Valiaが Acropolisに行こうと誘ってくれましたので、一緒に見学しました。



彼は携帯一つで何でもこなし、1ヶ月間 松本に居たときには自分よりも松本のことをよく知っていたのには驚かされましたが、この日も、正規料金の半額以下の格安タクシーを呼び、晩御飯も美味しいステーキレストランに案内してくれました。



翌日は帰路に着きます。
休む暇も無く、帰国した翌日から患者さんがぎっしりです。
いろんな先生が学会前後にギリシャ観光、やヨーロッパ観光をしているのに、自分は今回も殆ど学会のみ、、まあ仕方が無いです。
次回のESLOは、2年後にリスボンで開催されます。



2016.05.30 講演活動 第5回Digital Orthodontic meeting開催さる

第5回 Digital Orthodontics Study Club Annual meetingが 福岡市の With The Style Fukuokaで開催され、講演させて頂く機会を与えて頂きましたので 行って参りました。





下は 会場のWith The Style Fukuoka

とてもお洒落で、ホテルもレストランも良い感じです。
ホテル代が高いので、自分は2泊で1万円の東横インに泊まりましたが、寝るだけなので、それで十分です。


2011年頃でしょうか、ちょうど東京スカイツリーが出来た頃、テレビ電波がアナログ放送からデジタル化され、アナログテレビを使っていた私達庶民は、地デジチューナーを買うことを余儀なくされ、自分を含めてたくさんの人が愚痴をもらしていたのが随分前のことのように感じます。
写真も然りで、フィルムカメラからデジタルカメラが主流となった頃、デジカメを酷評し、フィルムに固執するカメラマンがたくさんいましたが、今もデジカメを一切使わないでフィルムカメラしか使わないというカメラマンはいないと思います。

医療分野においてもデジタル化は当然進められ、普通の写真はもちろんデジカメ、レントゲン等の診断機器もデジタル化され、アメリカの大学では、歯型を採るのも印象材では無く、口腔内スキャナーを使うところが増えてきています。

アナログとデジタルの決定的違いは、何と言っても情報量の違いです。
最近の4K放送、8Kテレビなどを見ると、アナログでは到底実現できない圧倒的な繊細な画像に驚かされますが、矯正歯科で撮るレントゲンも、フィルムからデジタルに変わって今まで見えなかったものが見えるようになり、今まで何時間もかけて石膏まみれになって作っていた技工物が、ダストフリーでチャカチャカとパソコンで出来てしまうのには、本当に時代の変遷を感じます。

Digital Ortho研究会の会長である 久保田隆朗先生は、その道の第一人者である Dr.Rohit Sachdevaと何年も前から一緒に研究されており、JOPでの連続寄稿はいつも拝読させて頂いていました。
昨年の日本成人矯正歯科学会で、久保田先生の特別講演を拝聴して、研究会のミーティングが開催されていること知り、自分も勉強させてくださいとメールしたところ、快諾頂き、入会させて頂きました。
その直後、今年のミーティングで講演してくれないかとオファーを頂き、入会して一度も会に参加していない、右も左もわからない自分に出る幕があるのかと不安に思いましたが、御指名でございますので受けさせて頂きました。

今回、久保田先生からは、3つについて話してくれと頼まれていました。
1つは「ヒロシステムのラボについて」
もう一つは「失敗をリカバーした症例」
そしてもう一つは「矯正治療の落とし穴」についてです。

まず、ラボについては手短に手順をお話しし、ひろ矯正歯科のHPからPDFがダウンロードできることをお話しししました。
現時点では、うちでは歯科技工士が石膏模型を分割して、ワックスセットアップを作ってその上で装置を作る完全な “アナログ” ですが、近い将来、PCでVirtual set upを行い、ブラケットの位置づけを行うように、、、出来ればいいなと考えております。

トラブル症例については、4つ、つまり、
1つめは、一般歯科でアゴの拡大をされて大変な事になって、ひろ矯正歯科に来た患者さんをリカバリーした治療について、
2つめは、他の医院で裏側矯正を開始したが、大変なことにひろ矯正歯科に泣きついてきた患者さんについて、
3つめは、4番と5番を誤抜されてしまった患者さんについて、
4つめは、エッチングによる「医療事故」の対応についてお話しさせて頂きました。

拡大に関しては、ひろ矯正歯科のHPに書いてあるように、私達矯正専門医はアゴの幅が明らかに狭窄している場合以外は拡大装置という物は使いません。
ところが、矯正の知識・経験の無い一般歯科の先生の中には、混合歯列期のお子さんの親にパノラマレントゲン写真を見せて「歯が入りきらないから、アゴを拡げなければならない」と言い、アゴの拡大を勧める先生が非常に多いです。
先日も、3才のお子さんがアゴの拡大をしないとダメだと言われたが、本当にそんな治療が必要か、と相談に来られた方がいらっしゃいました。
そのお子さんの歯列には狭窄は認められませんでしたし、3才であるという年齢を考えてもその歯科医の言っていることは途方も無い滅茶苦茶で、お母さんには拡大の適応症と非適応症、矯正治療を開始するタイミングについてお話ししました。

研究会当日のランチタイムでは、菅原準二先生も、一般歯科で拡大装置を入れられて、歯槽骨から歯根が飛び出してしまい、大変なことになっている患者がいると仰っていましたが、このような症例が物凄く増加している理由は2つ考えられます。
つまり一つ目は、可撤式床装置でアゴの拡大をする場合、歯科医師は歯科衛生士に歯型を採らせ、歯科技工士に拡大装置を作らせ、出来上がった装置をお母さんに使い方を説明してオワリ、つまり、歯科医師自身が何もしなくても高額な治療代を得ることが出来るので、治療する事を目的としているのではなく、金目当てでやっているということ。
そしてもう一つの理由が、有名な先生が、拡大をしたことで埋伏犬歯が救われたという症例を日本矯正歯科学会をはじめとするいくつかの歯科学会で講演しており、それを聞いた矯正専門医以外の先生達が適応症を理解せずに拡大に走っているものだと推察されます。

今回紹介した症例は、一般歯科医によって不適切に拡大された患者さんで、17才になっても拡大治療が終わりにならないので、セカンドオピニオンを求めて来院された患者さんです。
その患者さんは、顔が細く、どちらかというと日本人より白人のような顔幅なのですが、お口の中をみて唖然としました。
歯列の幅が物凄く広くて、明らかに異常なのです。


初診時のお口の中の状態


お母さんに聞いてみると、かかりつけの歯医者で 8才の頃からアゴの拡大を受け続け、今も続けているとのこと。
下の写真のように、上顎も下顎も、いくつもの拡大装置を使って、常識では考えられないほど拡大されました。



計測してみると、上顎の第一大臼歯間幅径は、52.3mm!!  
通常は非抜歯で 45mm程度、抜歯症例では 42~43mm程度ですから、いかに滅茶苦茶な拡大が行われているかがおわかり頂けると思います。

歯は、外側からは口唇と頬に押され、内側から舌に押され、両方から押されるバランスの取れたところに立っています。その圧力均衡を無視して、歯が入りきらないからアゴを拡げるとか、抜歯治療で奥歯が手前に移動しているのに奥歯の幅が変化していないといったのは、矯正歯科の基本を全く理解していない、根本的におかしな治療です。




この患者さんは、レントゲンを撮ってみたところ、上顎の12才臼歯は智歯とぶつかっており、このまま放置していると第二大臼歯が4本ともダメになるであろうこと、万が一感染がおこれば、第二大臼歯もその奥の第三大臼歯もダメになる可能性があるということ、このまま放置しておいてはいけない状況であることをお母さんに御説明しました。




下はお母さんからお借りした 8才の頃のレントゲンです。
この時期というのは、永久歯が重なって写ってくるのは当たり前なのです。
この時期から正しい知識のもと、適切な処置が行われていたなら、上記のレントゲンに示すような第二・第三大臼歯の埋伏干渉は起こらなかった、と言いきって良いと思います。
適応症も考えずに、歯が入りきらないから何でもかんでも拡げるというのは、「治療」ではありません。



お母さんには、主治医ともう一度お話しされることを勧め、お帰り頂きましたが、後日再来され、ひととおりの検査診断を行い、治療開始しました。
まず、上下左右の埋伏智歯の抜歯を口腔外科に依頼、口腔外科からは、8を抜くと7もダメになるかも知れない、全身麻酔下での抜歯が必要という連絡がありましたが、7番は無事残すことが出来ました。
上顎左右4番、下顎左右5番の抜歯は私が行い、上下舌側矯正にて治療を行い、1年4ヶ月の治療期間で良好な治療結果を得ました。


治療後の口腔内写真です。
ひろ矯正歯科に来られた時の主訴である、普通の歯並びになりたい、口元が引っ込んで欲しい、口が閉じられないので口呼吸している、アゴのウメボシが嫌だ、奥歯が噛めない等々は、全て改善することが出来ました。
写真は舌側のブラケットを外した30分後の状態ですので、歯肉が少し赤くなっていますが、次回来院時には綺麗な引き締まった歯肉になっており、歯周病や虫歯は認められませんでした。


私は、臨床で一番大切なことは、患者さんの主訴を改善することであると考えています。
もちろん、矯正歯科という学問のエビデンスに基づいた治療結果を得ていることは大前提です。
以前、ある有名な先生の院内症例検討会に参加した際に、私が「患者さんの主訴は何ですか?」と聞いたら、院長先生は「この先生らには、まだそんなこと教えてへんのや! 余計な事言わんといてくれるかな!」と、お怒りになりましたが、主訴がわからなければ、治療計画も立てられない、治療を始めることも出来ないわけで、いくら有名でも歯科医師としての姿勢に問題があるように思いました。

次の症例は、他の医院で舌側矯正を始めたが、担当医とトラブルになった症例です。
私が初診で拝察した際、患者さんは 拡大の必要が無いにもかかわらず、上下に Quad Helixという拡大装置が装着されており、しかも装置が口蓋歯肉に食い込んでいました。






患者さん曰く、舌側矯正という約束で治療を開始した、最初は奥歯だけ外側にブラケットが付いていたが、次第に小臼歯、犬歯へと外側にブラケットが付けられて、次回は前歯もブラケットを外側に付けると言われて、それでは舌側矯正でない、話が違うではないかと言ったが、その先生は、裏側にも装置が入っているからこれは裏側矯正だ、と言って取り合ってくれないとのことで、ひろ矯正歯科に相談に来られました。

主訴を確認すると、上下の歯が前突している、口元が出ていて口が閉じられない、ガミースマイル(笑った時に歯茎が見えすぎるということ)でしたが、なんと、上顎は 4番ではなく左右とも 5番が抜歯されており、近日中には下顎の 4番を抜くということでした。

検査・分析・診断を行った結果、主訴を改善するには、5番抜歯では到底無理で、もとの先生は出来るのかも知れないが、私には外科手術を併用しないと主訴を改善することは出来ませんとお話しました。

もう一人は、他の歯科医院で舌側矯正を開始して1年半、上顎は臼歯部の外側にブラケットが付いている、下顎は舌側に装置が入っている、上顎の治療はされておらず、もの凄い上顎前歯の前突、、。
主治医からは、1年半治療しているからこれで終わり、返金もしないと宣告され、ひろ矯正歯科に相談に来られました。


これでオワリ、返金もしないと言われたら、みなさんならどうしますか? 
こんなひどいことを平気でする歯科医は悪徳だと思いませんか?
なぜこんな悲惨な例が増えているのでしょうか?
歯科医師過剰で、こうでもしないと喰っていけないと言われていますが、虫歯でもなんでも真面目にきちんと治療している先生は、場所を問わず たいへん忙しくされています。
私は自分に出来ないことは、はっきりと「僕には出来ません」と言いますが、「出来ない」と言わずに患者さんに事実と異なることを言うのは、医療人として失格であると思います。


さらに「落とし穴」としてお話をさせて頂いたのが、最近だんだん普及しつつある CAD/CAM Applianceについて。
患者さんの歯型を採って、メーカーに送れば、患者さん一人一人にカスタマイズした装置を製作し、治療の進度に応じたワイヤーも数本曲げて返送してくれるというもの。
このブラケットを患者さんに接着して、添付のワイヤーを順にセットしてゆけば治ると思っている先生が非常に多いのですが、これも大きな間違いで、抜歯症例のメカニクスや舌側矯正が通常の矯正と異なる点を理解していないと、とんでもない事になります。
講演では、こんな時はどんな調整が必要かを手短にお話させて頂きました。


メーカーから添付されてきたワイヤーは、上記のような調整をしなければなりませんでした。


しかも、ブラケットが破折してしまったために、そこの部分には Hirobracketに置き換えて治療を継続しました。


プレゼンの締めくくりとして、「患者さんを治すのは装置では無い、私達なのだ」ということ、そして、「考えるということの重要性」をお話しましたが、驚いたことに Sachdeva先生の講演も、全く同じ事を言っておられました。
事前に打ち合わせをしたわけでもなければ、示し合わせたわけでもないのですが、、。

久保田先生は、「デジタル化することで簡単になるんだ、楽になるんだと思っている人が多いが、全く逆で、今までよりも情報量が多くなった分、治療結果も今までよりもシビアなものが求められる」、「アナログが出来ないからデジタルに行くというのは大間違いで、アナログが出来ない人間がデジタルに行っても出来ない」と仰っていました。

自分が常日頃言っていること、すなわち「自転車に乗れない人間がバイクに乗れるわけがない」、「ゴーカートをまともに走らせられない人間がレーシングカーに乗ったら、事故って死ぬだけだ」と相通ずる部分が多く、まったく感激しました。

近い将来、矯正診断は蓄積されたデーターを元に PCが自動で行い、治療に関しては、CTと Oral scannerを併用して、PC上で歯根を含めた理想咬合を配列し、そこでブラケットを調製し、そのまま正確に口腔内に装着し、ワイヤーはベンディングマシンが曲げて、口腔内写真も、説明もロボットが行う、 、、という時代が来ると思います。
どれだけ新しい技術を使う比率が増えても、キモの部分はやはり人間が行うものであると思いますし、私は私にしか出来ない職人的な治療を行う、日本矯正歯科学会専門医の名に恥じない矯正専門医でありたいと思っております。

久保田先生は2日間、Sachdeva先生の英語を通訳され、歯科の専門用語だけでなく、医学用語や工業用語までたいへんよく御存知で、研究されている内容も素晴らしく、歯科医師としてのレベルも素晴らしい先生だなあと、完全に敬服しました。



2016.05.28 学会・セミナー はやいもので、

はやいもので、入学シーズンをとっくに過ぎて、あと3日ほどで6月を迎えようとしています。
例年ですと、年頭に新年の挨拶のブログを書くのですが、今年は忙しいだけの理由ではなく、他の理由で日誌をアップするのを見合わせていました。

1月末には、Angle矯正歯科学会に参加しましたが、この報告はまたの機会に譲ります。
2月の24、25日は、第43回 日本臨床矯正歯科医会大会・ 長野大会に参加し、舌側矯正で治療した症例を3症例展示発表しました。大会のレポートは、スタッフブログをお読みください。

私が半年間、院長日記をアップしなかった理由は、日臨矯の会員資格に関する事だからです。
かなりの長文を書き、何度かアップしようかと考えましたが、来たる6月の大会に出席し、理事の先生方と直接話をして、その結果を今までのメールでのやり取りと併せて書きたいと思います。

現時点で言えることは、日本臨床矯正歯科医会というのは、矯正歯科専門で開業している先生しか入れない団体であり、会のホームページにもそのように詠われています。

「こうした精査のもとに組織された日本臨床矯正歯科医会は、会員一人ひとりが矯正歯科の専門開業医としての豊富な経験と責任の上に立つオルソドンティストであることを厳しく自らに課し、日々、患者さんに向きあっています。」

「日本臨床矯正歯科医会は矯正歯科専門開業医の団体として、」

ところが、矯正専門医ではない会員が数名いるということ、そしてそれを問題視している会員が少なくはないが、それについて理事会はどう考えているのか、理事会の対処如何によっては、日臨矯は取り返しのつかないことになる、ということです。(私が何かをしでかすぞ、という脅しではありません。会自体がダメになるという意味です。)

長野大会は、メトロポリタン長野で行われ、会場はメイン会場もコ・デンタルも懇親会も超満員でした。
地方都市の長野市でこれほどの大盛況となったのは、大会長の堀内敦彦先生と、事務局長の竹内誠先生のお人柄と、並々ならぬご尽力の賜であることは間違いありません。
自分は何もお手伝い出来なかったことを申し訳なく思うと共に、超・大成功であったことを本当に嬉しく思います。
竹内先生、本当にお疲れ様でした。



大会長の堀内敦彦先生


プロフィール

院長

長野県松本市在住

  • 1960年生まれ

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