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スタッフブログ

  • 2011/09/01

    放射線被曝について

    みなさん こんにちは、歯科医師のカミヤです。

     

    福島原発事故以来、放射線被曝について敏感になっていますが、政府、原子力安全委員会、東京電力など、関係者の言うことが二転三転しており、何を信じて良いのかわからない、という方が多いと思います
    そこで、放射線被曝について調べ、8月26日の院内勉強会で発表しました。
    聞き慣れない用語や単位が多く、イマイチ理解するのが難しいので、この日誌では、Q&A形式でまとめてみました。
    時々、この日誌を見ていただき、報道内容と照らし合わせて頂ければ、安心して生活出来ると思います。

     

    Q: 放射線、放射性物質の種類は?
    A: 放射線の種類としてはα線、β線、電子線、陽子線、γ線、X線があります。
    また「放射性物質」とは、上記の放射線を出す物質のことであり、これには、ヨウ素、セシウム、プルトニウム、ストロンチウム等があります。
    放射線は、離れるほど線量は弱くなり、数メートルくらいまでしか飛びません。
    また、各放射線は、紙やプラスチックにより遮蔽されます。
    レントゲン撮影時に鉛の防護エプロンを着けるのも、これを利用し、必要のない部位の被曝を避けるためです。

     

     

     

    Q: 放射線被曝の種類は?
    A: 放射線被曝の種類は、自然放射線と人工放射線に分けられます。
    自然放射線とは、自然界に存在する放射線のことで、私たちが何もしていなくても被曝しているわけです。
    自然放射線は、「外部被曝」と「内部被曝」に分けられ、外部被曝には、宇宙線や地殻に含まれる放射線核種による被曝が、内部被曝には、呼吸や食物摂取によって取り込まれる被曝があります。
    例えば、イランのランサーム市では、年平均 10.2 mSvの放射線を、ブラジルのバラパリ市では、年平均 5.5 mSvの自然放射線に被曝しながら生活していると言われます。
    一方、人工放射線とは、身近なものでは、X線検査などに用いられるものがあります。
    原発による一連の作業段階での被曝もこの中に含まれます。

     

    Q: お医者さんで撮るレントゲンは安全なの?
    A: 医者や歯医者で撮るレントゲンの被曝量は、以下のとおりです。

     

    お医者さんで撮るレントゲンの際の被曝量:
    ・ 胸部撮影:0.14mSv/1枚
    ・ 腰椎撮影:1.8mSv/1枚
    ・ CT撮影:7-20mSv/1回
     
    ひろ矯正歯科で撮るレントゲンの被曝量:
    ・ 頭部や手のレントゲン:0.02~0.03mSv/1枚
    ・ 口の中全体の大きなレントゲン(パノラマ):0.02~0.03mSv/1枚
    ・ 一つ一つの歯の小さなレントゲン(デンタル):0.01~0.03mSv/1枚
    ・ 顎関節のレントゲン:0.02mSv

     

    ひろ矯正歯科では、被曝軽減のため防護エプロンを使用しています。
    また、レントゲン器械へのセットはスタッフが行いますが、レントゲン照射は必ず有資格者である歯科医師が行い、助手や歯科衛生士がレントゲンを照射することはありませんので、御安心下さい。

     

    Q: 放射線の人体に与える影響は?
    A: 放射線を浴びると、人体に影響が出ることがあります。 その仕組みは、、、
    ① 放射線照射を受けた生体の原子に電離が起こります。
                       ↓
    ② これにより、直接または間接的に細胞内のDNAが損傷されます。
                       ↓
    ③ 細胞がこの損傷を修復できなかった場合や、誤った修復がなされた場合に、組織•個体の死や、癌・遺伝的障害が発生します。

     

    Q: 被曝した場合、身体の部位で影響の出やすいところと出にくいところがあるのですか?
    A: そのとおりです。これを放射線感受性と言います。
    早期に反応が現れる組織は、皮膚、粘膜、上皮などで、通常数週間以内に症状が現れます。
    晩期に反応が現れる組織は、脊髄、肺、腎臓、唾液腺、下顎骨などで、数ヶ月以上経ってから症状として現れます。
    同じ線量の放射線を受けた場合でも、組織によって発癌に対するリスクが異なります。
    発癌率の高い臓器は、生殖腺、骨髄、肺や胃などです。

     

    Q: 放射線の影響は、どうゆうふうに分類されますか?
    A:  放射線の影響は、確定的影響と、確率的影響に分類することが出来ます。
    確定的影響とは、急性放射線障害とも言われ、ある一定の線量以下では発現しませんが、一度に多量の放射線を浴びた場合には、脱毛や白内障などが起こり、場合によっては死ぬこともあります。
    一方、確率的影響とは、慢性放射線障害とも言われ、わずかな線量でも発現しうるものです。
    低線量の放射線を繰り返し被曝することで、症状として現れる場合と、被曝から一定期間をおいて発現する場合があります。
    被曝により、白血病、ガンなどになることがあり、流産や死産など、胎児への影響も見られます。
    明確な「しきい値」はなく、線量によって突然変異の確率が上がります。
    少量の被曝であっても、少量のリスクがあります。

     

    Q: 時々新聞で見る「等価線量」とか、「実効線量」とは、どうゆう意味ですか?
    A: 等価線量とは、等価線量=吸収線量×放射線荷重係数で求められます。
    放射線が人体を通過するときの人体へ及ぼす影響は、放射線の種類(α線、β線等)も考慮に入れる必要があります。
    人体への影響の度合いは、人体に与えるエネルギー量(吸収線量)に放射線の種類に基づく違いを考慮しなければなりません。
    また、実効線量とは、組織ごとの影響の起こりやすさを考慮して、被曝の影響を表す量のことで、実効線量(Sv)=Σ(等価線量(Sv)×組織荷重係数)で求められます。
    放射線被曝では、放射線感受性の異なる複数の組織・臓器が同時に異なる線量を受けますので、組織・臓器の等価線量に臓器ごとの影響に対する放射線感受性の程度を考慮した組織荷重係数をかけて、各臓器について足し合わせた量が用いられます。。。なんだか難しいですね。

     

    Q: 家族が放射線従事者なのですが、被曝は大丈夫でしょうか?
    A: 法律で放射線業務従事者の線量限度が決められており、全身被曝として、100mSv/5年(ただし、年あたり50mSvを超えないようにする)、組織や部位に対しては 150mSv/年、皮膚は 500mSv/年と定められており、この範囲内であれば、一応、安心ということになります。

     

    Q: 妊娠中の被曝で、赤ちゃんへの影響はありませんか?
    A: まず、妊娠可能な女子の腹部へは、5mSv/3ヶ月、妊娠から出産までの内部被曝は、1mSv以下と定められています。
    妊娠中に胎児が被曝した場合には、胎児への影響が起こり得ます。
    受精から9日目までの間に受精卵が被曝すると、受精卵は死亡します。
    受精から8週間までは、様々な臓器が形成される時期ですので、100mSv以上被曝すると奇形発生、精神発育遅滞が起こります。
    妊娠2ヶ月後は奇形発生がないとされていますが、赤ちゃんの発癌率は高くなります(前述の確率的影響)。
    線量が 5mSv以上と推定された胎内被曝者は、476人中21人(4.4%)が重度の知的障害となります。
     

     

    Q: 福島原発事故による放射線被曝の影響は?
    A: まず、避難指示地区の放射線量ですが、福島第一原発から20kmの波江町における2011年4月7日の実効線量は、58.5μSv/hです。
    つまり1日だと、58.5×24時間=1411μSvとなり、71日で100mSvを超えてしまうことになります。(1Sv=1000mSv=1000000μSv)
    また、牛肉から検出されたセシウム(137Cs)は、お肉1キロ当たり2300Bq(ベクレル)ですので、2300Bq×1.3×10−8Sv/Bq=2990×10−8Sv=0.03mSv/kg、
    100mSv÷0.03=3333kgとなり、3.3kgのお肉を食べると100mSvに達するという事になります。
    通常、レストランで食べるステーキが大体200~300gですので、ステーキを一度に11枚も食べる人は兎も角として、普通の食欲の方は心配するに足りず、と言うことが出来ます。
    参考までに、緊急時に考慮すべき放射線核種に対する実効線量係数は、137Cs  1.3×10−8Sv/Bqで、放射線物質が1秒間に1つ放射線が出ると1ベクレルと言います。
    これを全身の放射線影響の指数となる値に変換します。

     

    Q. 喫煙による発ガン率は?
    A: 受動喫煙における発ガン率は10-30%、能動喫煙では、200-400%に上昇します。
    一方放射線は、1年間に1000mSv浴びても発ガン率は5%の上昇ですので、喫煙等のほうが遙かに発癌リスクが高く、しかも、吸っている人だけでなく、回りの人に他人に対しても悪影響を及ぼす、と言うことが出来ます。
    院長も昔はタバコが大好きだったそうですが、完全にやめて、今ではタバコの匂いが大嫌いになったそうです。
    みなさんもタバコをやめましょう !!

     

    Q: 放射線による線量とそのリスクについて教えて下さい。
    A: 以下を参考にして下さい。
    0.1mSv: 東京−ニューヨーク間での飛行機での宇宙線からの被曝量
    2.4mSv: 自然界での1年間の被曝量
    7−20mSv: X線CTによる一回分の線量
    100mSv: 年間にこれだけ浴びると、発癌率が0.5%上昇し、健康に悪影響が出るとされる。 国際放射線防護委員会は100mSv/y以下であれば健康影響がないとしている。
    250mSv: 一時的にこれだけ浴びると白血球の減少が起こる。1年間にこれだけ浴びると、発癌率は 1.25%上昇する。
    500mSv: 一時的にこれだけ浴びるとリンパ球の減少が起こる。1年間にこれだけ浴びると、発癌率は 2.5%上昇する。
    1000mSv: 一時的にこれだけ浴びると、吐き気や嘔吐などの急性放射線障害が起こる。1年間にこれだけ浴びると、発癌率が 5%上昇する。
    2000mSv: 一時的にこれだけ浴びると、出血や脱毛等が起こり、5%の人が死亡する。 1年間にこれだけ浴びると、発癌率が10%上昇する。
    4000mSv: 一時的にこれだけ浴びると、50%の人が死亡する。
    10000mSv: 一時的にこれだけ浴びると、100%の人が死亡する。
     

     

    まとめ
    放射線被曝による健康被害を考えるとき、短時間にたくさんの線量を被曝することが問題です。
    現在いろいろな農作物や環境放射線の値が報道されていますが、様々な基準は非常に厳しく設定されているので、それらの値が多少あがっても混乱する必要がないと言うことが出来ます。
    そのため、むやみに放射線を怖がるのではなく、正しい知識を持つことが重要です。

     

    参考文献
    歯科放射線学 医歯薬出版
    歯科診療における放射線の管理と防護 医歯薬出版
    エッセンス歯科放射線 学建学院
    放射線学入門 産業医科大学医学部ホームページ

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