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スタッフブログ

  • 2012/09/23

    歯科用局所麻酔薬と偶発症について

    こんにちは、歯科衛生士の丸山です。
    今回の院内勉強会で私は「歯科用局所麻酔薬と偶発症」について調べ、発表しました。
    ひろ矯正歯科では、矯正治療に必要な抜歯は院長が行っており、その際、局所麻酔を行っていますが、局所麻酔薬とはどんなものなのか、私達スタッフも詳しく知っておく必要があると思い、今回のテーマとしました。

     

    まず局所麻酔とは何かといういと、「身体の一定部位を支配する末梢神経の機能を何らかの手段で一次的かつ可逆的に麻痺させ、その部位からの知覚の伝導を遮断する方法で、意識消失を伴わずに部分的に除通を行う麻酔」と定義されています。
    この局所麻酔作用を有する薬剤を「局所麻酔薬」といいます。

     

    局所麻酔法の種類には、下記の①〜③があります。
    ① 表面麻酔法:表面麻酔法とは粘膜や皮膚の近くに存在する知覚神経終末を麻痺させる方法です。
    一般的には、表面麻酔作用を有する局所麻酔薬を粘膜表面に直接塗布します。
    ひろ矯正歯科では主に以下の際に使用します。
    ・浸潤麻酔注射時の刺入時の除痛 
    ・動揺乳歯抜歯などの簡単な外科処置を行う際の麻酔として
    ・嘔吐反射の強い患者さんの歯型を採る際に、吐き気を軽減するために
    ・歯肉を電気メスで少し切る際の除痛
    ひろ矯正歯科では、リドカインスプレーと、キシロカインスプレーを上記の際に使い分けて使用しています。

     

    ② 浸潤麻酔法 (歯科では最も頻繁に用いられます)
    局所麻酔薬を目的とする部位に注射して、その部位の知覚神経を麻痺させる方法で、抜歯や、比較的小範囲の痛みを伴う処置・手術の際に使用されます。
    粘膜内に打つ「粘膜下注射」、もう少し深く骨膜近くに打つ「傍骨膜注射」、骨膜の下に針を進入させる「骨膜下注射」などがあり、部位や目的によって使い分けられます。
    急性の炎症がある場合は効果が得られにくく、炎症を拡大させる事がありますので、注意が必要です。

     

    ③ 伝達麻酔法
    末梢知覚神経の伝導路の途中に局所麻酔を作用させ、その部位から末梢側を麻痺させる方法です。
    ・浸潤麻酔よりも麻酔薬の量が少なく、奏効範囲が広く、作用時間も長い(2~3時間持続)
    ・浸潤麻酔で効果が得られ難い炎症部分に対しても有効である
    などの特徴がありますが、
    ・麻酔の奏効範囲が必要以上に広がる(末梢神経支配領域全てが麻酔される)
    ・必要以上に作用持続時間が長い(処置が終わっても長時間しびれが残る)
    ・局所の血管収縮が期待できないため、浸潤麻酔に比べて出血が多くなる
    ・注射針による神経・血管損傷の危険性がある
    ・薬物の血管内誤注入によって全身的な合併症を引き起こす危険性がある
    などの欠点があります。
    麻酔をした後、唇の感覚が麻痺していて噛んで傷つけてしまった等々の事故は、伝達麻酔に多いです。
    ひろ矯正歯科では、基本的に伝達麻酔は行いません。

     

    これらの局所麻酔は、化学構造によってエステル型とアミド型に分類され、前者には、コカイン、プロカイン、テトラカインなどが、後者には、リドカイン、プロピトカイン、メピバカインなどがあります。
    ひろ矯正歯科で浸潤麻酔に使用しているキシロカインは、アミド型の局所麻酔薬です。

     

    口腔内は血管に富んでおり、血管に吸収されて組織濃度が下がり作用時間が短縮しやすいため、ほとんどの局所麻酔薬には、エピネフリンやフェリプレシンなどの血管収縮薬が添加してあります。
    血管収縮薬が添加されている事によって、出血量の減少、術野の明視化、麻酔作用の増強、作用持続時間の延長が期待されるだけでなく、麻酔薬による急性中毒の予防や、局所麻酔薬の使用量を減らす効果があります。
    逆に、エピネフリンが添加されていることで、心拍数の増加、血圧上昇、血糖値上昇、心疾患・高血圧・糖尿病・動脈硬化などの患者の症状を悪化させることがあります。

     

    〜歯科麻酔による偶発症〜
    偶発症は必ず起こるものではなく、非常に稀にしか起こらないものもありますが、どんな症状か、どんな処置が必要かを調べました。
    偶発症の代表的なものとして以下のものがあります。
    1)口唇咬傷
    小児の局所麻酔後の偶発事故で最も多いのが口唇の咬傷です。低年齢で、下顎孔伝達麻酔を行った場合に多いです。術後に患者さんのほっぺたに「しびれています」のシールを貼ったり、保護者の方に説明を行います。
    2)キューンの貧血帯
    上顎の伝達麻酔後に不定形の境界明瞭な貧血帯が出現するもので、30~60分で消失します。さらに、貧血帯に一致して皮下出血がみられる場合がありますが、1~2週間で消失します。血管の痙縮や、血管収縮薬の影響であると考えられます。
    3)アナフィラキシ―ショック
    麻酔の偶発症で最も危険なものです。麻酔後に、悪心、悪寒、めまいを覚え、血圧低下、頻脈、顔面蒼白などを呈します。その場合は、トレンゼンブルグ体位をとらせ、酸素吸入を行い、内科医師との連携が必要になります。
    4)過換気症候群
    麻酔の際の緊張から、息づかいが荒くなり、血液中の二酸化炭素分圧が低下したことで脳血管が収縮、脳血流が減少して、意識消失が起こるものです。その場合は、紙袋などを口に当て、吐いた息を再呼吸することで楽になります。AKBのあっちゃんが、舞台裏でなったのを御存知の方が多いと思います。
    5)貧血
    麻酔後に悪心、悪寒、めまい、血圧低下、徐脈、顔面蒼白などを起こします。その場合、水平位をとらせ、保温、衣服をゆるめる、足を高くする、などの処置が行われます。重篤な場合には、人工呼吸が必要となることもあります。

     

    歯医者で麻酔をする際には、「ちょっとチクッとしますよ〜、、ブスッ!」と、いきなり麻酔されることが多いですが、ひろ矯正歯科では浸潤麻酔を行う際、必ず血圧・脈拍を測定し、患者さんの健康状態や過去の麻酔経験などをお聞きした上で麻酔を行っておりますが、それでも、過去17年間で3度ほど、麻酔後に具合悪くなった方がいらっしゃいます。
    何れも大事には至らずに済んでおりますが、その場合にも、必ずスタッフが近所の内科の先生のところにお連れしております。

     

    過去に麻酔で具合が悪くなったことがある方は、麻酔を打つ前に必ずお申し出ください。

     

    ≪参考文献≫
    1)処置別・部位別 歯科局所麻酔の実践、クテッセンス出版
    2)わかる! できる! 歯科麻酔実践ガイド、医歯薬出版
    3)スタンダード歯科麻酔学、学建書院
    4)歯科麻酔の正しい理解、口腔保険協会
    5)救急救命士標準テキスト、へるす出版
    6)新歯科衛生士教本:口腔外科・歯科麻酔学、医歯薬出版

     

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