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院長日誌

  • Luxembourg & Paris

    2018.01.12~13、ドイツの舌側矯正専門の学会である Die Deutsche Gesellschaft für Linguale Orthodontie (DGLO) の第12回学術大会が Luxembourgで開催され、DGLOでの講演に加えて、学会のPre-congress courseの講師と、さらにDGLOの後、パリ大学での講演を頼まれましたので、有り難く受けさせて頂きました。
    このブログは1月中にアップするつもりだったのですが、忙しくて今頃になってしまいました、、。

    ルクセンブルクは親友Dr. Germain Beckerの母国で、彼はルクセンブルクに5つ、ドイツに1つの矯正専門のオフィスを展開しています。
    Germainは、過去には日本舌側矯正歯科学会日本矯正歯科学会で来日していますが、自分は Luxembourgには行ったことが無いので、今までにCEOなど、幾度となくお誘いを受けていたのですが、どうしてもスケジュールがあわず、伺うことが出来ずじまいでした。
    今回も1月の末〜2月の頭にかけてアメリカに行かなければならないのですが、どうしても Luxembourgと Parisに行かないとけない旨を会長に説明し、了解を頂きましたので、ようやく行くことが出来ました。

    ○○大学教授とか、日本△△学会会長などの立派な肩書きあれば、海外の学会から飛行機代+ホテル代+講演の謝礼つきで招待されるのは珍しいことではないのですが、私のように何処の大学にも属さず、さしたる肩書きも無く、人口たかだか6万人の片田舎で開業している者が毎年毎年海外の学会からこのように呼んで頂けるというのは本当に有り難いことですので、与えられた機会には出来る限り応えるようにしていますが、現地での学会が3日間でも、移動と時差を含めると1週間は休診にしなければならないので、いくつかは御辞退申し上げている状態です。

    現在所属する学会も、貴重な時間を割いて参加しても得るものが殆ど無いとか、政治色の強すぎる学会は暫時退会することにし、自分に本当に必要な学会のみに絞り込みをかけている今日この頃です。

    1月10日、HNDからANACDGに向かい、CDGからは TGVLuxembourgに向かいます。
    Luxembourgでの宿泊先は学会場の Hotel Royal、列車、タクシーを乗り継ぎ、深夜にホテルに到着しました。

    翌日は特に予定はありませんので、Germainが彼の5つあるうちの2つのオフィスに案内してくれました。

    ドイツを含めた 6つのオフィスは、9名の矯正専門医、約40名の歯科衛生士やアシスタントなど(事務のみを専門に行っているスタッフだけでも数名)で運営されており、現在、Germainは現役から退き、彼の息子さんである Jean-Philippeが総責任者となって矯正治療からスタッフマネジメント、経営のマネジメントなど、全てをコントロールしています。
    アポイントはオンラインで取ることも出来、全体のシステム、データー管理等々、全てが素晴らしくマネジメントされていました。(うちのアポイントも、ホテルの予約のようにオンラインで患者さんが自分で出来るようにしたいのですが、、大きな問題が起きないか現在検討中です。)


    当然、セミナールームもあり、患者さんやスタッフへの勉強会などがいつでも可能です。


    ここはもう一つ別のオフィスです。

    そんなに大勢のスタッフを抱えていたら、入れ替わりのたびに1からトレーニングしないといけないから大変じゃないか、と聞くと、スタッフも定着しているとのことで、羨ましい限りです。
    日本ではちょっと気に入らないとすぐに辞めて行く人が多く、就職しても1ヶ月未満で辞めて行く新社会人が社会問題になっていますが、最近では医療スタッフにも同じ傾向が見られ、あろうことか、医師や歯科医師までもが治療中の患者さんをほったらかして勝手に辞めて行くという、何とも無責任な信じられない事例があちこちで見られます。
    特にこの神奈川県立がんセンターの重粒子線治療室の件は、人の命を救うのが使命である医師が、治療中の患者さんをほったらかしにして次々と辞職したため、陽子線治療を受けていた癌の患者さんが治療を受けられなくなるという、まさに前代未聞、非常識極まりない話です。
    人の命を何とも考えず、こうゆう非常識かつ無責任なことを平気で行う者は、医師の資格なし、医道審議会にかけて医師免許停止ないしは剥奪すべきであると思いますが、皆さんはどう思われるでしょうか、、。

    Germainのオフィス見学のあとは、市内観光に連れて行ってくれました。
    Luxembourgは面積は小さいけど裕福な国で、労働者の40% は毎日 Luxembourgの国境を超えて周辺諸国から通勤しているとのことです。

     
    忙しい中、案内をしてくれて、本当に感謝です。

    翌日、学会の Pre-congress courseは、故 Alain Deckerの愛弟子である Dr.Guillaume Lecocqと私の2人で Wire bending courseを行いました。

    歯科界では digital化が著しいのに、何故、今 Wire bending なのか、、と思う先生も多いと思いますが、、。

    一般の方向けに虫歯の治療を例に挙げてみますと、
    通常の治療では、
    1, 歯を削り、
    2, 印象材で歯型を採り、
    3, 印象に石膏を流して歯型の石膏模型を作り、
    4, 石膏模型を咬合器に装着し、
    5, ダウエルピンを立てて、
    6, 治療する歯の部分を分割し、
    7, 削った歯冠部分を蝋で形成し(ワックスパターン)
    8, ワックスパターンにスプルーを立てて、
    9, ワックスパターンを鋳造リングに埋没剤で埋め、
    10, 炉で焼却し、
    11, そこに溶かした金属を流し込んで鋳造し、
    12, 研磨し、
    13, コンタクト調整、咬合調整を行い、
    14, 研磨し、
    15, 完成
    という手順を踏みますが、
    デジタルで行う場合、
    1, 歯を削り、
    2, 口腔内スキャナーで削った歯の形をスキャンし、
    3, そのデーターをパソコンに取り込み、
    4, ミリングマシンで削り出して、
    5, 研磨し
    6, 完成
    と、なんとも簡単に出来るようになっています。

    CAD/CAMでは、簡単に出来るだけでなく、印象材や石膏、埋没剤や鋳造収縮等々による寸法変化をコントロールでき、また対合歯も含めてデーター処理が出来るので、咬合調整やコンタクト調整もパソコンで出来てしまう上に、ダストフリーですから、従来の歯科技工士の「キツイ、キタナイ、深夜残業、薄給」という労働環境から脱却しますし、患者さんにとっての大きなメリットとしては、白い審美的な材料を使って保険で治療が受けられる(小臼歯・大臼歯)ということでしょう。(以上は一般歯科治療のお話です)

    デジタル化は当然矯正歯科にも進んできており、患者さんの口腔内からスキャンした不正咬合のデーターをパソコン上で治療後の綺麗な歯並びに排列しなおし、パソコン上で矯正装置を製作し、治療に用いるワイヤーも digital dataをもとに wire bending machineが曲げる、したがって、そのシステムで作られた矯正装置を患者さんに接着し、一緒に添付されてきたベンディングマシンの曲げたワイヤーを順にセットしてゆけば、理論上は矯正医がワイヤーを曲げなくても治療終了まで問題なく治療が進行する(筈である)、というものです。
    一連のシステムの先駆者は、私の友人の Dr.Dirk Wiechmannが開発した Incognitoですが、彼自身は随分前に Incognitoの権利を3Mに売却して、現在は現在 Win Systemというもので治療をしています。
    こういった CAD/CAMで作られた一連のシステムは日本でも講習会を受講し、使う先生が増えつつありますが、わたしは正直なところ、こういった CAD/CAM applianceは二度と使いたくないです。
    理由はいくつかありますが、問題点をざっと列挙すると、
    1, まず治療を受ける患者さんの側からは、装置代が非常に高価なので、その分治療代が高くなり、患者さんの負担が大きくなるという事、
    2, 日本人は白人の症例と違って叢生が著しく、levelingが進むにつれてArch lengthは変化してきますので、添付されてきたbending machineの曲げたwireのinsetが全く合わない、使い物にならないということ、
    3, ligationの問題(bracket-wire engagementが甘い)、
    4, bracket slotの滑りの問題、
    5, 治療中の bracketの破折の問題、
    6, Bonding baseの不具合による bracket脱落の問題、
    7, 治療中の bracketの紛失の問題、
    8, 治療中の wireの破折の問題、
    9, そして Wire bending machineの曲げた wireには、anti-bowing curveも gable bendも組み込まれていないので、そのまま患者さんの口に入れても治らないどころか、Force systeを理解していない先生が使えば、取り返しのつかない事になります。
    食わず嫌いはいけませんので、過去には実際に何症例か試験的に使って治療しましたが、正直、レベルが低すぎ、結局全部 Hiro bracketに付け替えて治療を終了しました。

    舌側矯正が出来ない先生には、リンガル関連の講習会を片っ端から受講している先生も多いようですが、講師の中にはキモの部分については内緒にして教えない先生もいますよ!

    話を元に戻しますと、Pre-congress courseでは、実際に Arch wireの曲げ方、space closeの際の Compensating bendの曲げ方、注意事項等々について説明をしながら実際に先生方にワイヤーを曲げて頂きました。


    私は30年以上、毎日何十本もワイヤーを曲げているので、wire bendingは日常の動作なのですが、やっていない先生には神業に映るようです、、。

    DGLO学会では、私自身も digital set upなど、従来のラボよりもメリットがある部分は取り入れて仕事をするように進めていること、全てデジタル化した場合の問題点などについて実例を挙げてお話させて頂きました。


    講演だけでなく、座長をも務めさせて頂きました。

    学会終了後は Gala dinner、いつもながらとても美味しく、楽しい時間を過ごすことが出来ました。

    Dinnerの終盤ではおきまりのダンスタイム、みんながステージ前に集まり、踊り始めます。
    僕は踊れないから、と言って座っていると、You must dance!と言っていつも無理矢理引っ張って行かれるので、練習しなければ、、。

    翌日は早朝、TGVで Parisに移動、パリ大学の近くの格安ホテルに泊まります。

    パリに到着後、翌日はフリーですので、電車を乗り継ぎ、故 Alain Deckerのお墓にお参りをしてきました。


    Alainが生きていたらなあ、、。
    お花を供えてホテルに戻ると、奥さんから御礼のメールが届いていました。
    一緒に食事を約束していたのですが、時間が合わずに今回は会えずじまいでした。


    DUOLEの前夜は Germainが食事に誘ってくれ、翌日の打ち合わせ等々を行います。
    彼にはいつも本当に感謝しています。

    翌日は朝9時から講演が始まりますので、少し早めに朝食をとり、パリ大学に向かいます。

    パリ大学の教授達には、まずDGLOで講演した内容を少しmodifyしてお話し、さらにここ数年applyしている米国アングル矯正歯科医会のお話をさせて頂きました。

    1時間半の講演を終えると、お昼御飯に連れて行ってくれました
    このホテルは、モンマルトル地区にある高級ホテルで、最上階のレストランからはパリの市街が一望でき、エッフェル塔も見えます。


    仏蘭西料理は芸術です。

    食事が終わるころ、雨が雪に変わり、かなり激しく降っていますが、暫く様子を見ると晴れ間が出てきて、その間に大学病院に戻ります。
    午後は日没まで大学病院で過ごします。
    白衣に着替え、何人かの患者さんを診てくれと頼まれ、口腔内を見ます。

    患者さんには、「今日は日本から舌側矯正で有名な先生が来ている」と話してくれているようで、診療後に患者さんからは、「こんな有名な先生に診て貰えて、今日はラッキーだ」と喜んで頂けたときは嬉しかったです。


    大学病院の外来には、患者さんも教授達も行き交うところに、自分の治療した症例が今も誇らしげに飾られていました。
    有り難いことです。


    Post graduateの先生達のリンガル専門の勉強会にも顔を出させて頂きました。
    テキストには、ヒロシステムが!

    夕方18時頃にはクタクタになり、ホテルに戻り、今回の任務終了となりました。

    年内、海外はポルトガルとドイツに、国内は横浜、新潟、東京、大阪等々十数回、学会に行かなければなりません。忙しい、忙しい、、。

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