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院長日誌

学会・セミナー

  • EACMFS

    頭蓋顎顔面手術の治療に関する学会、EACMFS(European Association for Cranio Maxillo Facial Surgery)の第24回学術大会が9月18日から21日、ドイツ ミュンヘンで開催されましたので、参加してきました。
    この学会は、今回はミュンヘンで開催されましたが、International meetingで、参加する先生も世界中から、開催地も世界各地で開催されており、顎顔面手術に関する学会では、最も権威のある学会です。

     

    参加目的は、
    1,最新の口腔外科手術の実態を知るには、日本の口腔外科学会よりも世界中のスペシャリストが集まる学会に参加した方が良い
    2,外科的矯正治療は日本だけでなく世界的に Surgery firstが一般的になりつつあるが、その現状とレベルについて知っておきたい
    3,最近の digital化により、外科矯正も 3DCTと Intra Oral Scannerのdataを combineして Virtual Surgeryを行うのが当たり前になってきているので、機械大国ドイツでの実態と精度について知っておきたい
    等です。

     

    ひろ矯正歯科では、患者さんの治療を行うにあたり、まず、初診相談でお口の中を拝見させて頂き、おおよその治療方法、治療期間、必要な費用などを御説明させて頂きます。
    カウンセリングのあと、詳しい検査を希望された患者さんに対してのみ、矯正歯科治療を行うために必要な検査を行い、分析した検査資料から矯正診断を行い、治療方針を患者さんに御説明し、患者さん御自身の同意が得られた場合にのみ矯正歯科治療を開始しています。
    「歯並びを治すのに大人の歯を4本抜いた」という話を聞いたことがあると思います。
    また、「すごい受け口を治すのに手術して下アゴを引っこめた」という話も聞いたことがあるかも知れません。
    抜歯に関しては、患者さんからすれば、出来るだけ歯を抜かないで治療したいのは当然でしょうし、私達矯正歯科医としてもなるべく抜かないで治療したいのですが、分析の結果、抜いた方が良いと診断結果が出ているのに、無理に抜かないで治すと、歯の寿命を著しく縮めてしまったり、満足な治療結果が得られない等々、いろんな問題が出てきます。
    白人は凸凹の度合いが軽度ですので、抜歯治療の割合が約30%ですが、日本人は叢生が著しいために、概ね70%は抜歯症例であると報告されています
    つまり10人患者さんがいれば、7人は抜歯が必要であるということです。
    ちなみに、ひろ矯正歯科では、抜歯の比率は概ね50%と、日矯学会誌のデータよりも少なくなっています。これは、成長期の患者さんは成長をコントロールすることで、非抜歯で治療することが出来、この比率が他の医院よりも多いためです。
    (※戒田清和他:鶴見大学歯学部附属病院矯正科の過去25年間における抜歯部位および頻度についての検討、日矯歯誌 57,103-106,1998.)

     

    手術に関しては、基本的に健康保険適用となり、手術を併用して矯正治療を行う場合は、矯正治療も健康保険適用となります。
    ものすごい出っ歯や受け口で、著しい骨格的な異常を伴っており、矯正歯科のみで治療するよりも、外科手術を併用して治療した方が良い場合があります。いわゆる外科矯正で、症例が全体の患者さんに占める割合は医療施設によってかなり開きがあり、東京の某先生は、全体の 50%を超えると言っていましたが、日本の矯正歯科専門医における平均は、概ね13~17%であると言われています。
    ちなみに、ひろ矯正歯科では、徹底的に外科手術を避けて治療しておりますので、外科矯正の割合は全体の患者さんの 0.2%に過ぎません。つまり、矯正歯科専門医では、100人中 13〜17人が外科矯正で治療しているのに対し、ひろ矯正歯科では 1000人中 2人程しか居ないということです。この 0.2%の人は、著しい顎変形を伴っており、手術しなければ患者さんが治療結果に満足出来ないと診断し、患者さん御自身も外科手術を希望された場合です。

     

    Surgery firstに関しては、いろいろ言いたいことがあるのですが、個人的な事情により、今は書くことが出来ませんので、またの機会に書きたいと思います。

     

    17日羽田発ミュンヘンまで直行のANAに乗り、ミュンヘンのホテルには、午後7時頃に到着。ヨーロッパに行ったときはいつも、最初の3日くらいは必ず夜中3時頃に目が開いて寝れなくなり、空腹との闘いになりますので、ホテルに到着後はハンバーガーと、ウエルカムドリンクのヴァイッェンビールをいただき、11時頃に寝ましたが、、、やはり夜中の 3時頃に目が開いてしまい、仕方なく起きて仕事をします。

     

    とはいえ、今回の学会では講演はせず、聞くだけなので、時間に追われて Power Pointと格闘するというわけではないので、気が楽です。
    海外の学会で発表しないで聞くだけというのは、記憶の限りでは今回が初めてかな、と思います。
    発表しないとこんなにも気が楽なんだなあ、ということを初めて体験、これが普通なのでしょうが、なんだか罪悪感のような、申し訳ないような気がしました。

     


    ハンバーガーとヴァイッェンビア、美味しかったです。

     

    18日は朝から会場まで歩いて行き、事前登録のカウンターで参加証と抄録を、、ところが、抄録は無し、携帯にアプリをダウンロードして、携帯で見るようになっています。
    抄録の印刷費が節約でき、かさばらなくてよいのでしょうが、アンダーラインを引いたり、付箋を付けたり、ペンで書き込んだりすることが出来ないので、非常に不便でした。
    バッテリー切れに備えてモバイルバッテリーを持って行ったのは正解でした。

     


    学会場の Gasteig。講演会場は、この Gasteig、向かいの Holiday Innです。物凄い大きな学会でした。

     


    講演会場に入りきれずに通路まで人が溢れている講演もありました。

     


    その夜はホテルの近くの Haxnbauerでシュバイハクセを食べました。普通、シュバイハクセは少し臭みがあるのですが、ハクセンバウアーのシュバイハクセは少しも臭みが無く、外はカリカリ、中はジューシーで凄く美味しかったです。

     


    翌朝はホテルの近くの産直市場、Viktualienmarktを通って会場に向かいます。

     


    モーニング珈琲でなくて、モーニングビア〜、、、さすがミュンヘン。

     

    4日間を通しての感想は、「世界の一流の口腔外科の先生は、ここまで顔面再建するのか!」と感激しました。特に小児外傷の治療の手術に関しての Edward Ellis先生の講演、上顎癌や頭蓋骨再建についての Andre Eckardt先生の講演は本当に感銘を受けました。
    たとえば、組織の損傷が著しい場合には、身体の他の部分から皮膚を切り取って移植するのですが(植皮、皮弁)、もっと損傷が著しい場合、筋被弁を行います。
    つまり、皮膚だけを薄く剥がして患部に移植するのが植皮・皮弁ですが、筋組織に含まれる血管ごと切り取り、患部に移植するのが筋被弁です。
    この後のリンク先に含まれる画像は、一般の方には少しショッキングだと思いますので、どうしても見たい方だけどうぞ。

     

    その1その2

     

    上顎骨が半分無い患者さんの顔面も見事に再建してしまう技術には、本当に感激しました。
    皮膚の再建に関しては、火傷で皮膚が著しい損傷を受けた場合に、ティラピア(魚)の皮を使って治療する事を考え出したBrazil、Ceará大学のOdorico de Morais教授は、考えついた事自体が偉大ですが、もっと凄いのは、火傷治療だけに終わらず、ティラピアでの治療は今はもっと進化を遂げ、ロキタンスキー症候群(子宮と膣の一部が先天的に欠如している先天性の疾患)の患者さんの膣再建までも成功しているということです。

     

    今回、EACMFSに参加して、ひしと思ったことは、この先生達は一生懸命切磋琢磨して自分の技術を磨き、自分の行う治療に誇りを持っており、患者さんの治療を行うことに生きがいを感じている、ということです。

     

    それに比べると、最近の矯正歯科はどこに向かっているのでしょうか。「インビ○ライン」などに代表されるいわゆる「マウスピース矯正」、情けない限りです。
    永年、専門教育を受け、しっかりとした技術と能力を持っている筈の専門医までもが、こんなクソみたいな物に手を出し、高価な治療代を患者さんに請求し、「歯並べ」を行う。
    そもそも矯正歯科というのは、きちんとした理論に裏付けられた診断と治療目標があり、ただ単に歯を並べて終わりでは無い筈です。
    こんなものは矯正歯科ではないので、「マウスピース矯正」などと、「矯正」という言葉を使うのはやめて頂きたい。「マウスピース歯並べ」とか、「歯並べ倶楽部」と言って欲しいです。
    実際にアメリカのアライナーの広告には、Orthodontics(矯正歯科)という言葉は使われていません。
    やっている先生達は、「需要があるから仕方が無い」とか、「ワイヤーベンディングに朝から晩まで時間と体力を尽くす奴は馬鹿だ」と言いますが、真の矯正専門医はこんな物に手を出しません!
    需要があれば良いのか、並べば良いのか、という低レベルな話になってくると閉口しますが、例えば、この先生達が銀座の寿司屋に寿司を食べに行って、大将がスーパーで買ってきた寿司を出して来たら、怒りますよね?  大将の言い分は「オレが握るより、西友の寿司の方が旨めえんだ、文句あっか?」と言ったら張り倒すでしょう。

     

    どうしても「マウスピース歯並べ」をやりたい患者さんは、歯医者に大金を支払わないで、そのお金でアメリカに行き、Marcy’sでアライナーのキットを購入して送れば($79)、アライナーを作って返送してくれるので、そのほうが遥かにマシだと思います。もちろん、行かなくてもネット注文も可能です。
    あまり書くと、アライナーをやっている先生から嫌がらせを受けますので、このへんでやめときます。

     

    学会の翌日は、オクトーバーフェストが開催されていましたので、行ってきました。
    ミュンヘンの駅は民族衣装をまとった人達でいっぱい、世界最大の祭典です。

     


    駅を降りると会場まで歩道にオクトーバーフェストのロゴがペイントされていて、そのとおりに歩いて行けば会場に着きます。
    初めてでしたが、いや、物凄いです。

     


    大テントには約4000人が収容できるそうで、この大テントが醸造所ごとに別々にあり、合計で14もあります。

     


    オクトーバーフェストでは、ウエイトレスがこんなにたくさんのジョッキーを運ぶのが有名です。
    ジョッキ一杯 1リッター(Massと言います)ありますので、この女性の運んでいるビールは、11㎏にもなります!

     


    自分も一杯飲みましたが、美味しいですね。ソーセージも美味しい!

     


    観覧車から会場全体を見てみました。驚いたことに、これらの施設はテントも、ジェットコースターも、観覧車も、全て仮設で、オクトーバーフェストが終わると全て撤去して、更地にするそうです。

     

    ミュンヘンではタクシーでは無く、公共交通機関を利用して移動しました。
    ドイツでは地下鉄、トラム、バスなどは共通の切符で乗ることが出来ます。
    1回券、1日券など、いろいろありますが、10枚綴りの回数券がお薦めです。
    回数券は1年間有効、使い方は、乗る前に必ず打刻することです。
    打刻しないで乗ると、キセル乗りで捕まり、罰金は60ユーロです。

     


    切符は自販機で買います。切符に打刻する器械は、小さな駅ではホームに、大きな駅ではホームに降りるエスカレーターの周囲にあります。

     


    切符を機械に入れると打刻されます。回数券は、右の写真のように折って機械に入れます。
    この切符で S-bahn(都市近郊電車)、U-bahn(地下鉄)、Bus(市内バス)、Tram、Regionalzugの全てに乗ることが出来ます。

     

    帰国してからもビールがやめられなくなりました。
    今日も患者さんに喜んで頂けるよう、一生懸命治療します!

     

     

  • 第13回ESLO開催さる

    6月28日から7月1日まで Portugalの Cascaisにて 第13回ヨーロッパ舌側矯正歯科学会が開催され、講演と Titular memberの試験官を頼まれましたので、有り難く受けさせて頂き、行ってきました。

     

    いつも診療に追われて講演の準備をする時間が無く、講演前日完成というパターンなので、今回はもっと早くに準備を終えて、機内ではワインでも飲みながら映画を楽しもう、と思っていたのですが、毎日朝から晩まで診療とペーパーワークに追われる状況は何も変わらないので、叶わぬ夢、出発当日になってもプレゼンの準備が終わっていません。
    毎朝7時頃には出勤して仕事をしてたんですけど、、、。

     

    東京に向かう特急あずさ の中でも、羽田空港でも、本当に数分をも惜しんでPCを開き、機内でも一睡もせずに必死で準備しますが、終わらないまま宿泊先である Hotel Vila Gale Estorilに夜11時頃到着。

     

    プレゼン準備が終わっていないのが気がかりですが、翌朝は9:00から試験官をしなければならないので、朝方3:00頃には寝ることに。

     

    ホテルは学会を通じてではなく、個人で取ったホテル、リゾート地でオーシャンビュー朝食付きとのことで、楽しみにしていましたが、、、確かに海は見えますが、目前が海というわけではなく、イメージと違うなあ、、、まあこんなもんかぁ、、、。

     

    朝食を取り、8時半に試験会場に向かいます。
    ESLOはヨーロッパの矯正専門医のための学会であり、ヨーロッパの先生しか役員や会長にはなれません。
    ですから、今までは Examinerではなく、Supervisorという肩書きで症例審査をして来ましたが、今回は正式に Examinerということで参加しています。
    今回配布された名簿を見て、Titular memberの第一号は、2008年、私ひとりだったんだということを初めて知りました。


    しかも、ESLOでは、4人しかいない Honorary membersの中の1人として登録されています。
    なんと有り難いことでしょうか。
    WBLOの第一号を私が頂いたことや、こういったことが面白くない先生が、とうとう、、。

     

    ちなみに、前回の Athensの ESLOで暴力事件をおこした先生は、ESLOから「除名」となりました。
    この先生は日本舌側矯正歯科学会でも役員をしていますが、JLOAからは何もお咎め無し。
    国際的な大きな問題に発展している以上、少なくとも理事会にかけて厳重処罰をしないことには、今後の JLOAの対外的な関係にも問題が出てくると思うのですが、、。
    まあ、自分は JLOAのそういうところが嫌で退会したのだし、JLOAがどうなろうと自分には関係のないことですが、何も関係ない日本人が海外の学会で白い目で見られるような事は避けるべきだと思いますが、、。

     

    話を試験に戻します。
    今回は Active memberへの受験者が26名、Titularへの受験が11名、試験はいつもどおり匿名で行われていますので、自分に知らされているのは Candidate No.だけで、何処の国の誰なのかといったことは何もわかりません。
    渡された Candidate No.のテーブルに行き、提出症例を審査します。

     


    部屋はまさに「水を打ったような静けさ」です。

     

    審査は基本的に EBOの採点基準に則っており、減点方式で規定どおり審査して行きます。
    最初に審査をした Candidateの Case 1は、Openbite caseなのに、臼歯を遠心移動して治療しています。
    Reportには、下顎の Forward rotationにより開咬が改善されたと書いてありますが、レントゲンの重ね合わせでは下顎の Forward rotationは見られません。
    これは診断、治療方針からダメ、治療後の評価もダメ、今思えば、診断と治療方針の項目でバッサリ減点して落とすべきでしたが、悩んだ挙げ句、合格点を与えてしまいました。
    さらに Case 3は、下顎の第一大臼歯に分岐部病変があるので(抜歯しなければならないような状況ではない)、第一大臼歯を抜歯、第二大臼歯を近心移動した、とのことですが、水平埋伏していた智歯を牽引誘導して仕上げるべきなのに、智歯も抜歯されていて、下顎には右も左も大臼歯が1本しかありません。
    埋伏智歯を牽引しないで抜歯した理由は、「一般歯科医が抜いてしまった」と記してありますが、これはあかんやろ、と思いましたが、これも不覚にも合格点を与えてしまいました。

     


    術前(上)と術後(下)のパノラマX線写真。
    左下の第一大臼歯が抜歯されただけでなく、左下の智歯まで抜かれ、しかも治療後の左下の第二大臼歯には大きな根尖病巣が、、、今見ても、これは無いな〜って思います。
    なぜこんなひどい治療にOKを出してしまったのか、、、不合格にすべきでした。

     

    Case 4はパノラマX線写真が治療前のものしか提出されていないので、術後の Root parallelingなどの評価が出来ません!
    5症例全て治療後のレントゲンが添付されていないことから、英国の先生だろうと思って(英国では治療後のレントゲンを撮ることが出来ないので)、Presidentの Germainに相談、治療後のレントゲンは無くてもOKということでしたので合格にしたのですが、後の面談の時に会ってみると、実はオーストラリアの先生でしたので、英国じゃ無いと知っていたら不合格は間違いなかったのですが、、。
    その時に、「Case 3は何故埋伏智歯を牽引誘導して使わなかったのか。抜歯されたのは一般歯科医のせいにしているけど、私達矯正専門医は患者の歯を守るために矯正治療をしているわけだから、抜歯に関しても責任があるのじゃないかい?」とコメントをしましたが、不機嫌そうな顔。
    話しをしていて、とても不愉快になりましたので、そこで話は打ち切り。

     

    もう一人審査をした Candidateは、5症例とも大変難しい症例を出してきていました。
    個人的にはOKだったのですが、模型や写真などが規定のレベルに達しておらず、減点要素も多かったために、この先生は落ちてしまいました。
    試験後、その先生と話をすると、誠実な先生で、とても気の毒な気がしました。

     

    その後の Examiner’s luncheon meetingでその事を話すと、それは仕方が無い、Toshiが悪いんじゃ無いから気にするな、と、みんなから言われましたが、なんだか複雑な気分でした。

     

    これは個人的意見ですが、例えば終了時のレントゲンがない、ということは、どのようなお国事情であれ、それは「試験の公平さ」を欠いているわけで、資料が揃っていない先生は受験資格が無い、そしてそのようなファイルを出して来た時点で審査中止とすべきであると思います。
    例えば、ABOや JOBの試験に終了時のレントゲン無しで通るか、といえば、100%絶対に通らないです。

     

    以前、New Yorkで WBLOの審査をした際には、平行模型が提出されておらず、全て咬合器に装着して出されていた Candidateをバッサリ切って落として、それが会長の友達だったために、会長からたいへん非難されましたが、友達だから通せというなら、そんな試験は無い方がマシ、診査する前に合格不合格を決めれば良いじゃないか、と、突っぱねました。
    今回の最初の Candidateも、迷わず落とすべきだったと後悔しています。

     

    今回の件を踏まえて、今後の試験は、口頭試問をしたあとに最終評価を出すとか、1人の Candidateを複数の Examinerで評価する、等々の提案をしたいと思います。

     


    Examiner’s luncheon meetingにて

     

    その夜は Welcome cocktail partyが海辺のテラスで開かれ、久しぶりに再会したいろんな国の先生達と話しが弾みます。

     

     

    Party終了後、一緒に食事に行こうと誘われましたが、明日のプレゼン準備が終わっていないので、さすがに無理、ホテルに帰って準備します。

    翌朝は朝食前に少し散歩をしてみました。

    仕事じゃなければ、こんな素敵なビーチでビールでも飲んで、のんびりしたいところです。

     

    朝食を食べてから会場に向かい、Opening ceremonyから出席します。
    自分の講演は午後イチ、昼食の後なので、多分会場はガラガラだろうなと思っていたのですが、みんな戻って来てくれて、会場は満員に近い状態でした。

     


    満席になると、こんな状態です。

     

    今回の ESLOのテーマは、 “Simplicity and efficiency -solution for daily practice-” でしたので、私の講演は、“Are you simplifying or complicating your practice?”という演題で、リンガルの治療を難しくしている要因についてお話しました。

     

     

    もともとリンガルの治療は、通常の外側からの矯正(以下、ラビアルと記します)に比べて高度な技術と舌側矯正特有の知識を必要とし、診断もラビアルとは異なるのですが、その難しいリンガルの治療を一層難しくしている原因は、じつは商品を売るために流布されている間違った情報などに惑わされていませんか、ということで、例えば、精度のないボンディングシステムを薦めたり、自分の開発したブラケットを売るための誇大な宣伝を行っている先生が野放しになっているからです。
    そもそも学会発表というものは、商品の宣伝の場ではありませんから、利益相反のある発表は禁止されている筈で、ブラケットが売れれば自分の懐にお金が入ってくるという御当人が、学会発表を宣伝の場として使用し、販促活動を行うというのは如何なものでしょうか。
    販促活動をしたければ、業者展示のブースでプレゼンをするべきで、これなら誰も文句言いません。
    この点については、ESLOの役員の先生達も同様に言っていますので、近い将来、宣伝目的であると考えられる講演は禁止になるかも知れません。

     

     

    これが一例です。

    この上の写真は2008年に私がスペインの矯正歯科学会誌に投稿したもので、下の写真は、某先生が2012年に自分の出版した本に掲載した写真。

    違うところはダウエルピンが穴の開いたプレートになっているくらいで、写真のカットまで同じように撮られています。
    彼らの言う Kommon baseは、最初は舌面のみを被覆する形態でしたが、それでは精度が出ないために、彼らが切縁までレジンパッドを延長するようにモディファイしました。
    それは、私が1998年に日矯学会誌に投稿し掲載されたオリジナルのヒロシステムそのもの、違いは全く無いどころか、オリジナルのコモンベースの利点を全てスポイルしています。
    現在の Hiro systemはボンディング後にコアの除去が容易に出来ますが、彼らがモディファイしたコモンベースはコアの除去が出来ないため、何一つメリットはありません。
    こうゆうボンディングシステムを あたかも素晴らしい、最新のテクニックのようにプレゼンし、いちいち ”Now, we are not using Hiro system but Kommon base, ah?” くどくどと言う理由は 皆さんおわかりですね。
    ちなみに、Kommon baseの開発者の小森先生御自身は、いつもプレゼンの時に私の紹介をしてくださり、私の事を悪く言うことは絶対にありません。

     

    さらに、今回の私のプレゼンでは、リンガルの治療に於いて、Arch wire coordinationが如何に無意味なものかも説明しました。
    なぜなら、その人達がいつも Arch wire coordinationを出してくるからで、リンガルのことを本当に理解していれば、そんな無意味なものを出してくるわけがないからです。

     

     


    その日のお昼には、パリ大学のDUOLEに呼ばれ、皆さんと一緒にお昼を食べました。
    いつも呼んで頂けるのは本当に有り難いことです。
    フランス語を勉強しなければ、、、。

     

    夜は President dinnerが会場で開催され、お役目を無事終えましたので、お酒もしっかりと頂き、ディナーを楽しませて頂きました。
    もともとは お庭で開かれる予定でしたが、珍しく降り始めた雨のために室内で開かれました。

     

     

     

    翌日も朝から晩まで、会場から一歩も出ずに全ての講演を聞きますが、どちらかといえば Deviceの紹介、誰でもやっていることは同じで、特に目新しい話はありませんでした。
    その夜は Gala dinnerが Casino Estorilで開かれました。

     


    Presidentの Guillaumeがいつの間にかステージでベースを弾いていました。
    あまりにも上手く、違和感がなかったので、気付かない先生も多かったようです。

     

     

    翌日は学会最終日、お昼で学会は終わりです。
    朝 8:30から General assembly、9:00から学術講演が始まる予定でしたが、またもいつもと同じく、1人のイタリア人が次期会長や開催場所にクレームを付けはじめ、終了予定時間を30分も過ぎているのに終わる気配は一向になし。
    このクダラナイ問答のために、学会スケジュールが30分も遅れてしまいました。
    まったくいい加減にして欲しいです。

     

    その後の講演では、2人の日本人の先生が1つの演題として治療報告を行いましたが、1人目の先生は構音障害が著しく、明らかに発音が異常なので、講演後に挙手質問、 「先生は、今、矯正治療中ですか?」と聞きますが(英語で)、英語が全く理解出来ないようで、もっとわかりやすい、単純な英語で聞きますが、通じない。
    とうとう会場から 「日本語で聞け!」との声があがりましたので、日本語で聞いてみると、 彼からは  “Yes”という答が帰って来ましたが、もう一人の女性の演者が慌てて “No”と遮ったのは一体何だったんでしょうか、、、。

     

    そして、そのもう一人の女性の先生は、開咬症例で抜歯をせずに臼歯の遠心移動を行って治療した症例を出して来たので、質疑応答で「矯正歯科というのは学問であり、治療にも原則がある筈です。開咬症例で臼歯の遠心移動を行えば下顎の clockwise rotationを起こして、開咬は一層悪くなるはずです。この症例では何故小臼歯を抜歯しないで臼歯の遠心移動を行ったのでしょうか、その理由を教えて下さい。」と聞きますが(学会なので当然英語です)、返答が帰って来ない。
    何故答えないのか、、、おそらく、自分が治療していないので、診断の根拠がわからないのでしょう、とうとう質疑応答の「応答」がないまま終了、、、これは一体どうゆう事でしょうか。

     

    後日、私が質問した事に対して一部の先生が誹謗していると聞きましたが(日本の先生のみ)、そうゆう事を言うこと自体おかしな話で、私は別に虐めるつもりで質問したのではありません。
    患者さんの治療を行う立場の矯正歯科医が、聞き苦しいほどの Tongue thrustをしていれば、それは矯正専門医としては不適格ですし、もし舌側矯正のブラケットが入っていて、それが発音障害の原因であれば、それを隠し、偽った事は問題です。
    矯正歯科の原則を無視した治療が行われ、それを自慢げに講演されれば、聞いている人達からは「日本人は矯正学の基本が全くわかっていない」という評価を受けますから、意義を申し立てるのは専門医として当たり前の事です。
    これは国際学会なのです。
    矯正歯科は 200年以上の歴史を有する学問です。
    今まで世界中の臨床家や研究者が行ってきた膨大な報告や研究やデーターを無視して、
    「矯正歯科=歯を並べれば良い」
    「見た目を良くするのが矯正治療」
    という考えが まかり通るならば、歯科矯正学の学問自体が崩壊するのが目に見えているからです。

     

    最近、日本の矯正歯科学会でも問題になっているように、マウスピース矯正(イン●●ラインに代表されるアライナー矯正)をやる歯科医が増えてきています。
    矯正学の事が何もわからない一般歯科医だけでなく、矯正専門医として尊敬出来ると思っていた先生までもが最近イン●●ラインに衣替えし、ユーザーミーティングでプラチナドクターとして講演することを誇りに思っている。
    勘違いというか、可哀想というか、、、。
    そもそも、プラチナドクターは、どれだけイン●●ラインにお金をつぎ込んだかで決まるもので、その先生の矯正歯科医としてのレベルがプラチナというのではありません。
    その先生達は、「需要がある」、「楽な上に、今までとは比べものにならない大金が入ってくる」などと言いますが、目を覚ませ!
    業者のインスツルメントにさせられて嬉しいのか!
    一体この人達は、6年間、歯科大学で何を学び、卒後何年間 矯正専門のトレーニングを受けてきたのでしょうか?
    アメリカでは Smile care clubとか Smile direct clubなどに代表されるように、 一般の人がインターネットで注文すれば、歯型を採る材料が送られてきて、説明書に書いてあるとおりに自分で自分の歯型を採り、返送すれば、数日後に何枚ものアライナーが送られて来て、それを指示どおりに自分で装着する、というのが拡大しつつあります。
    すなわち、歯科医師は不要なわけです。
    私は別に「嫉妬」しているわけでもないし、自分に「出来ない」から言っているのではありません。(出来ないのではなく、こんなクソみたいな物はやらないのです。)
    医科も歯科も、全ての医療行為は「正しい診断」があって初めて「治療」が出来るわけで、そのために「検査」が必要であり、「知識と経験」が必要になるわけです。
    歯科の中でも矯正歯科は特殊な分野であり、少しかじっただけではまともな治療は出来ません。
    10年以上にわたる高度な専門教育、優れた診断能力のもと、最新の技術を駆使する努力が必要です。
    一般の人が自分で歯型を採って、返送して出来上がってきたアライナーと、矯正専門医が自院にやって来た患者さんにアライナーを入れる、何処が違うでしょうか?
    モノは同じ、違いは、患者さんが歯科医師に高い仲介料を支払うか、それとも歯科医師をスルーして直接メールオーダーして無駄な出費を抑えるか、それだけです。
    こんなものが歯科医師の行う医療と言えるか、こんなものが矯正歯科治療と言えるか?
    絶対に Noです。
    一般の人はそのへんの事がわからないので仕方が無いですが、専門教育を受けた歯科医師が、その程度の判断が出来ないわけがないです。
    しかもやっている歯科医には、通常のマルチブラケットの矯正と遜色ない治療結果を得られるとホームページに記している者もいます。
    しかも、アライナーだけでは動かせないとなると、歯の外側にノッチを接着したり、ボタンを付けて顎間ゴムをかけます。
    Horses & Deers、悪あがきもいい加減にしたらどうかな、と思います。

     


    これがマウスピース矯正(写真はインターネットで検索して引用)。
    自分の歯には何も付かないのでは無く、■や●のレジンの固まりが接着され、マウスピースにはボタンが付けられ、輪ゴムがかけられています。
    これでも、こんなモノ、やりたいですか?

     

     

    もう1つ書いておかないといけない事があります。
    日本には、日本矯正歯科学会をはじめ、その関連地方学会や、日本臨床矯正歯科医会、日本顎関節学会や日本口蓋裂学会、日本成人矯正歯科学会や日本舌側矯正歯科学会などなど、海外では、AAO、WFO、EOS、ESLO、WSLO、だけでなく、それぞれの国にいろんな専門的な学会が存在します。
    学会と言えば聞こえは良いですが、中には、執行部が好き勝手やり放題の会、退会者が後を絶たない会もあり、その存在意義・設立目的自体が異常である会もあります。
    学会の理事役員は、会の正常な運営を行うために選ばれているのに、理事になった途端に自分は会員よりも「身分」が高いと勘違いして横柄に振る舞ったり、自分の保全だけを考えてダメなものをダメと言わなかったり、仲の良い先生が持ち回りで会長になったり、、、そんな会は存在する価値自体がありません。
    基本的にどの会に入会するか、どの会を辞めるかは自由ですので、今後は自分にとって本当に必要なものに絞り込み、不要なものは暫時退会します。
    日本舌側矯正歯科学会はすでに退会しました。
    WSLOと日本臨床矯正歯科医会は、近日中に退会する方向で考えています。
    理由は別の機会に詳細に記します。

     

     


    Presidentの Guillaumeです。Good job!

     

     

    次回のESLOは 2010年、イタリアのソレントで開催されます。

  • Luxembourg & Paris

    2018.01.12~13、ドイツの舌側矯正専門の学会である Die Deutsche Gesellschaft für Linguale Orthodontie (DGLO) の第12回学術大会が Luxembourgで開催され、DGLOでの講演に加えて、学会のPre-congress courseの講師と、さらにDGLOの後、パリ大学での講演を頼まれましたので、有り難く受けさせて頂きました。
    このブログは1月中にアップするつもりだったのですが、忙しくて今頃になってしまいました、、。

    ルクセンブルクは親友Dr. Germain Beckerの母国で、彼はルクセンブルクに5つ、ドイツに1つの矯正専門のオフィスを展開しています。
    Germainは、過去には日本舌側矯正歯科学会日本矯正歯科学会で来日していますが、自分は Luxembourgには行ったことが無いので、今までにCEOなど、幾度となくお誘いを受けていたのですが、どうしてもスケジュールがあわず、伺うことが出来ずじまいでした。
    今回も1月の末〜2月の頭にかけてアメリカに行かなければならないのですが、どうしても Luxembourgと Parisに行かないとけない旨を会長に説明し、了解を頂きましたので、ようやく行くことが出来ました。

    ○○大学教授とか、日本△△学会会長などの立派な肩書きあれば、海外の学会から飛行機代+ホテル代+講演の謝礼つきで招待されるのは珍しいことではないのですが、私のように何処の大学にも属さず、さしたる肩書きも無く、人口たかだか6万人の片田舎で開業している者が毎年毎年海外の学会からこのように呼んで頂けるというのは本当に有り難いことですので、与えられた機会には出来る限り応えるようにしていますが、現地での学会が3日間でも、移動と時差を含めると1週間は休診にしなければならないので、いくつかは御辞退申し上げている状態です。

    現在所属する学会も、貴重な時間を割いて参加しても得るものが殆ど無いとか、政治色の強すぎる学会は暫時退会することにし、自分に本当に必要な学会のみに絞り込みをかけている今日この頃です。

    1月10日、HNDからANACDGに向かい、CDGからは TGVLuxembourgに向かいます。
    Luxembourgでの宿泊先は学会場の Hotel Royal、列車、タクシーを乗り継ぎ、深夜にホテルに到着しました。

    翌日は特に予定はありませんので、Germainが彼の5つあるうちの2つのオフィスに案内してくれました。

    ドイツを含めた 6つのオフィスは、9名の矯正専門医、約40名の歯科衛生士やアシスタントなど(事務のみを専門に行っているスタッフだけでも数名)で運営されており、現在、Germainは現役から退き、彼の息子さんである Jean-Philippeが総責任者となって矯正治療からスタッフマネジメント、経営のマネジメントなど、全てをコントロールしています。
    アポイントはオンラインで取ることも出来、全体のシステム、データー管理等々、全てが素晴らしくマネジメントされていました。(うちのアポイントも、ホテルの予約のようにオンラインで患者さんが自分で出来るようにしたいのですが、、大きな問題が起きないか現在検討中です。)


    当然、セミナールームもあり、患者さんやスタッフへの勉強会などがいつでも可能です。


    ここはもう一つ別のオフィスです。

    そんなに大勢のスタッフを抱えていたら、入れ替わりのたびに1からトレーニングしないといけないから大変じゃないか、と聞くと、スタッフも定着しているとのことで、羨ましい限りです。
    日本ではちょっと気に入らないとすぐに辞めて行く人が多く、就職しても1ヶ月未満で辞めて行く新社会人が社会問題になっていますが、最近では医療スタッフにも同じ傾向が見られ、あろうことか、医師や歯科医師までもが治療中の患者さんをほったらかして勝手に辞めて行くという、何とも無責任な信じられない事例があちこちで見られます。
    特にこの神奈川県立がんセンターの重粒子線治療室の件は、人の命を救うのが使命である医師が、治療中の患者さんをほったらかしにして次々と辞職したため、陽子線治療を受けていた癌の患者さんが治療を受けられなくなるという、まさに前代未聞、非常識極まりない話です。
    人の命を何とも考えず、こうゆう非常識かつ無責任なことを平気で行う者は、医師の資格なし、医道審議会にかけて医師免許停止ないしは剥奪すべきであると思いますが、皆さんはどう思われるでしょうか、、。

    Germainのオフィス見学のあとは、市内観光に連れて行ってくれました。
    Luxembourgは面積は小さいけど裕福な国で、労働者の40% は毎日 Luxembourgの国境を超えて周辺諸国から通勤しているとのことです。

     
    忙しい中、案内をしてくれて、本当に感謝です。

    翌日、学会の Pre-congress courseは、故 Alain Deckerの愛弟子である Dr.Guillaume Lecocqと私の2人で Wire bending courseを行いました。

    歯科界では digital化が著しいのに、何故、今 Wire bending なのか、、と思う先生も多いと思いますが、、。

    一般の方向けに虫歯の治療を例に挙げてみますと、
    通常の治療では、
    1, 歯を削り、
    2, 印象材で歯型を採り、
    3, 印象に石膏を流して歯型の石膏模型を作り、
    4, 石膏模型を咬合器に装着し、
    5, ダウエルピンを立てて、
    6, 治療する歯の部分を分割し、
    7, 削った歯冠部分を蝋で形成し(ワックスパターン)
    8, ワックスパターンにスプルーを立てて、
    9, ワックスパターンを鋳造リングに埋没剤で埋め、
    10, 炉で焼却し、
    11, そこに溶かした金属を流し込んで鋳造し、
    12, 研磨し、
    13, コンタクト調整、咬合調整を行い、
    14, 研磨し、
    15, 完成
    という手順を踏みますが、
    デジタルで行う場合、
    1, 歯を削り、
    2, 口腔内スキャナーで削った歯の形をスキャンし、
    3, そのデーターをパソコンに取り込み、
    4, ミリングマシンで削り出して、
    5, 研磨し
    6, 完成
    と、なんとも簡単に出来るようになっています。

    CAD/CAMでは、簡単に出来るだけでなく、印象材や石膏、埋没剤や鋳造収縮等々による寸法変化をコントロールでき、また対合歯も含めてデーター処理が出来るので、咬合調整やコンタクト調整もパソコンで出来てしまう上に、ダストフリーですから、従来の歯科技工士の「キツイ、キタナイ、深夜残業、薄給」という労働環境から脱却しますし、患者さんにとっての大きなメリットとしては、白い審美的な材料を使って保険で治療が受けられる(小臼歯・大臼歯)ということでしょう。(以上は一般歯科治療のお話です)

    デジタル化は当然矯正歯科にも進んできており、患者さんの口腔内からスキャンした不正咬合のデーターをパソコン上で治療後の綺麗な歯並びに排列しなおし、パソコン上で矯正装置を製作し、治療に用いるワイヤーも digital dataをもとに wire bending machineが曲げる、したがって、そのシステムで作られた矯正装置を患者さんに接着し、一緒に添付されてきたベンディングマシンの曲げたワイヤーを順にセットしてゆけば、理論上は矯正医がワイヤーを曲げなくても治療終了まで問題なく治療が進行する(筈である)、というものです。
    一連のシステムの先駆者は、私の友人の Dr.Dirk Wiechmannが開発した Incognitoですが、彼自身は随分前に Incognitoの権利を3Mに売却して、現在は現在 Win Systemというもので治療をしています。
    こういった CAD/CAMで作られた一連のシステムは日本でも講習会を受講し、使う先生が増えつつありますが、わたしは正直なところ、こういった CAD/CAM applianceは二度と使いたくないです。
    理由はいくつかありますが、問題点をざっと列挙すると、
    1, まず治療を受ける患者さんの側からは、装置代が非常に高価なので、その分治療代が高くなり、患者さんの負担が大きくなるという事、
    2, 日本人は白人の症例と違って叢生が著しく、levelingが進むにつれてArch lengthは変化してきますので、添付されてきたbending machineの曲げたwireのinsetが全く合わない、使い物にならないということ、
    3, ligationの問題(bracket-wire engagementが甘い)、
    4, bracket slotの滑りの問題、
    5, 治療中の bracketの破折の問題、
    6, Bonding baseの不具合による bracket脱落の問題、
    7, 治療中の bracketの紛失の問題、
    8, 治療中の wireの破折の問題、
    9, そして Wire bending machineの曲げた wireには、anti-bowing curveも gable bendも組み込まれていないので、そのまま患者さんの口に入れても治らないどころか、Force systeを理解していない先生が使えば、取り返しのつかない事になります。
    食わず嫌いはいけませんので、過去には実際に何症例か試験的に使って治療しましたが、正直、レベルが低すぎ、結局全部 Hiro bracketに付け替えて治療を終了しました。

    舌側矯正が出来ない先生には、リンガル関連の講習会を片っ端から受講している先生も多いようですが、講師の中にはキモの部分については内緒にして教えない先生もいますよ!

    話を元に戻しますと、Pre-congress courseでは、実際に Arch wireの曲げ方、space closeの際の Compensating bendの曲げ方、注意事項等々について説明をしながら実際に先生方にワイヤーを曲げて頂きました。


    私は30年以上、毎日何十本もワイヤーを曲げているので、wire bendingは日常の動作なのですが、やっていない先生には神業に映るようです、、。

    DGLO学会では、私自身も digital set upなど、従来のラボよりもメリットがある部分は取り入れて仕事をするように進めていること、全てデジタル化した場合の問題点などについて実例を挙げてお話させて頂きました。


    講演だけでなく、座長をも務めさせて頂きました。

    学会終了後は Gala dinner、いつもながらとても美味しく、楽しい時間を過ごすことが出来ました。

    Dinnerの終盤ではおきまりのダンスタイム、みんながステージ前に集まり、踊り始めます。
    僕は踊れないから、と言って座っていると、You must dance!と言っていつも無理矢理引っ張って行かれるので、練習しなければ、、。

    翌日は早朝、TGVで Parisに移動、パリ大学の近くの格安ホテルに泊まります。

    パリに到着後、翌日はフリーですので、電車を乗り継ぎ、故 Alain Deckerのお墓にお参りをしてきました。


    Alainが生きていたらなあ、、。
    お花を供えてホテルに戻ると、奥さんから御礼のメールが届いていました。
    一緒に食事を約束していたのですが、時間が合わずに今回は会えずじまいでした。


    DUOLEの前夜は Germainが食事に誘ってくれ、翌日の打ち合わせ等々を行います。
    彼にはいつも本当に感謝しています。

    翌日は朝9時から講演が始まりますので、少し早めに朝食をとり、パリ大学に向かいます。

    パリ大学の教授達には、まずDGLOで講演した内容を少しmodifyしてお話し、さらにここ数年applyしている米国アングル矯正歯科医会のお話をさせて頂きました。

    1時間半の講演を終えると、お昼御飯に連れて行ってくれました
    このホテルは、モンマルトル地区にある高級ホテルで、最上階のレストランからはパリの市街が一望でき、エッフェル塔も見えます。


    仏蘭西料理は芸術です。

    食事が終わるころ、雨が雪に変わり、かなり激しく降っていますが、暫く様子を見ると晴れ間が出てきて、その間に大学病院に戻ります。
    午後は日没まで大学病院で過ごします。
    白衣に着替え、何人かの患者さんを診てくれと頼まれ、口腔内を見ます。

    患者さんには、「今日は日本から舌側矯正で有名な先生が来ている」と話してくれているようで、診療後に患者さんからは、「こんな有名な先生に診て貰えて、今日はラッキーだ」と喜んで頂けたときは嬉しかったです。


    大学病院の外来には、患者さんも教授達も行き交うところに、自分の治療した症例が今も誇らしげに飾られていました。
    有り難いことです。


    Post graduateの先生達のリンガル専門の勉強会にも顔を出させて頂きました。
    テキストには、ヒロシステムが!

    夕方18時頃にはクタクタになり、ホテルに戻り、今回の任務終了となりました。

    年内、海外はポルトガルとドイツに、国内は横浜、新潟、東京、大阪等々十数回、学会に行かなければなりません。忙しい、忙しい、、。

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